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DSS(Dynamic Spectrum Sharing)とは?5GとLTEの同時運用を可能にする技術

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5Gの電波のエリアを広げるためには、まだ多くの現実的なハードルが存在します。

「今あるものを、どう活かすか」その問いに真っ向から挑むのが、DSS(Dynamic Spectrum Sharing)です。

LTEと5Gが、まるでひとつの道を譲り合うように、同じ周波数帯を分け合いながら共存する。

この柔軟な技術が、私たちの目には見えない場所で、5G普及の背中をそっと押しているのです。

目次(タップできます)

DSSの技術概要

DSS(Dynamic Spectrum Sharing)は、LTEと5G NR(New Radio)が同一の周波数帯をリアルタイムに共有する技術です。

ネットワーク側では、LTEのサブフレーム(1ms単位)ごとに周波数資源を瞬時に再割り当てし、両世代の通信が同時に提供されます。

基地局(eNodeB/gNodeB)は時間・周波数領域を細かく分割し、LTE信号と5G NR信号を並行して送信。

その結果、LTE端末も5G端末も、それぞれに最適な電波を認識し、自分の居場所を見つけることができる仕組みになっています。

こうした仕組みはすべてソフトウェアで制御され、限られた資源を無駄なく使い切るスマートな運用が可能となるのです。

DSSが注目される背景

周波数不足の解消

5Gの本格展開において、新規のSub6やミリ波帯だけでは、全国隅々まで電波を届けるには限界があります。

既存のLTE帯域を活用することが、その突破口になったのです。

設備活用の効率化

DSSの導入により、すでに全国に整備されたLTEの基地局装置や帯域をそのまま使いながら、5Gのサービスも並行して提供できる。

これにより、早く、低コストで5Gを広げることができます。

NSA方式との親和性

NSA(Non-Standalone)方式は、5GをLTEの上に構築する仕組み。(LTE向けのコア設備に接続)

その構造上、DSSとの相性は非常に高く、段階的な5G普及を支える縁の下の力持ちとも言える存在です。

DSS対応ネットワーク構成

基地局側

LTEと5Gを同じアンテナ・同じキャリアで送受信するためには、基地局側のスケジューラや無線ユニットの統合が求められます。

主要ベンダーは、既存の基地局にソフトウェアアップデートで対応できるよう開発を進めています。

端末側

DSSによる5G通信を享受するには、NSA対応端末が必要です。

Dual Connectivity(デュアル・コネクティビティ)機能を使い、LTEと5Gを同時に保持しながら、柔軟なデータ通信を行います。

また、LTEの参照信号を考慮したレートマッチングなど、複雑な制御にも対応できる高度な設計が求められます。

日本国内の導入状況

  • ソフトバンク: 2021年より全国でDSSを導入。既存のBand3やBand1を5Gと共用し、エリア拡大を進めています。
  • KDDI(au): Band3を軸に、LTE帯域の5G転用を推進。DSSの活用により、都市から地方までの5G展開をスピードアップ。
  • NTTドコモ: 当初は新規帯域を優先していましたが、2021年度以降はLTE帯域のDSS化も進め、バランスのとれた5G化を展開中です。

海外キャリアによる導入事例

  • Verizon(米国): Ericsson・Qualcommと連携し、DSSを中核技術として活用。ミッドバンドの不足を補い、柔軟なエリア展開を実現。
  • Swisscom(スイス): LTE帯域を活用して早期に5Gの広域カバーを実現し、ユーザー体験を向上。
  • SK Telecom(韓国): 都市部だけでなく地方展開にもDSSを活用し、全国的な5G整備を着実に進めています。

DSSによるメリットと課題

メリット

DSSは既存のLTEインフラを有効活用することで、新たな設備投資を抑えつつ、5Gエリアを素早く広げられます。

またNSAとの相性が良く、滑らかで安定した5Gサービスの立ち上げを後押ししてくれます。

課題

ただし、DSSが使う帯域幅はあくまでLTEと同じであるため、通信速度は5Gの理想とは少しかけ離れ、4G相当になるケースもあります。

さらに、異なる信号構造を共存させるための制御設計は複雑で、技術的なハードルも依然として存在しています。

DSSを支えるベンダー技術

  • Ericsson: Spectrum Sharing機能をソフトウェアで提供。既存設備に柔軟に適応可能。
  • Nokia: AirScaleプラットフォームにDSSを統合し、多彩な周波数帯に対応。
  • Huawei: 独自技術「フラッシュDSS」で、4G/5Gの高速切り替え・共存を可能に。
  • Qualcomm: DSS対応チップセット(Snapdragon 865/765など)で、端末側の進化を支えています。

まとめ

これから5Gは、やがてスタンドアローン(SA)方式へと完全移行していきます。

その過程で、DSSの役割は少しずつ変わり、やがて表舞台を退くかもしれません。

しかし、LTEから5Gへの橋渡しという使命を果たしたDSSの存在は、通信の進化を支えた確かな「通過点」として、静かに語り継がれていくでしょう。

そして今もなお、DSSは未来を見据えるネットワーク技術の土台として、次なる6G時代へ向けた布石となり続けています。

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