光ファイバーや電話線を電柱から電柱へ、あるいは電柱から建物へと架け渡すとき、細いケーブルだけではその重みに耐えられません。
そのケーブルを支えるために一緒に張られるのがメッセンジャーワイヤーです。
普段は人の目にとまらない存在ですが、通信インフラを裏側から支える縁の下の力持ちです。
メッセンジャーワイヤーの役割

メッセンジャーワイヤーの役割は、ケーブルに余分な張力がかからないように支えることです。
空中に張られた光ファイバーや電話線は、風や雪、あるいは自重によって大きな力を受けます。
そのままでは断線や垂れ下がりの原因になります。そこでワイヤーがケーブルを吊り下げ、荷重を受け持つことで安定した配線を実現します。
とくに光回線の引き込み線であるドロップケーブルは細径で強度が弱く、そのままでは屋外配線に耐えられません。
メッセンジャーワイヤーと組み合わせることで、家庭やオフィスまで安全に光を届けることができます。
構造と種類
一般的なメッセンジャーワイヤーは亜鉛めっきされた鋼線を撚り合わせて作られます。
7本撚りが標準で、柔軟性と強度を兼ね備えています。気温や荷重変化に合わせて伸縮するため、施工時には少し余裕を持たせて張るのが特徴です。
また、光ケーブル自体にワイヤーを一体化した「自己支持型ケーブル」も存在します。
いわゆるFigure-8ケーブルやADSSケーブルと呼ばれるもので、別途メッセンジャーワイヤーを張る必要がなく、施工を簡易化できるメリットがあります。
一方で、通常のドロップケーブルには外付けのワイヤーが必須です。
使用される場面
メッセンジャーワイヤーが最も活躍するのは屋外の架空配線工事です。
電柱間を横断する光ケーブル、ビルとビルをつなぐネットワーク、マンションへの光回線引き込みなど、多くの現場で使われています。
郊外では鉄塔間を結ぶような広域ネットワークでも利用され、都市部では建物壁面に固定してケーブルを引き込む際にも欠かせません。
通信工事だけでなく、商業施設の照明や装飾を吊り下げるために利用されることもあり、用途は多岐にわたります。
施工の流れ
実際の工事では、まず電柱や建物の固定点にアンカー金具を取り付け、そこにワイヤーを結びます。
その後、延線機やウインチで張力をかけ、適切な弛みを持たせながら固定します。
張りすぎると後の温度変化で破断の危険があり、逆に緩すぎると垂れ下がりや接触障害の原因になります。ここに熟練の技術者の勘と経験が活かされます。
ケーブル自体はスパイラルハンガーやクランプを使ってワイヤーに吊り下げられます。
これにより、光ケーブルは自重から解放され、安定して信号を届けることができます。
設計と注意点
メッセンジャーワイヤーを設計する際は、風荷重や積雪による重量を必ず考慮します。
安全率を確保しつつ、強度に見合った径のワイヤーを選ぶことが重要です。
例えば30mスパンであれば、約1%の弛み(0.3m程度)を目安に設計することが多いです。
また、支持物の強度も忘れてはなりません。電柱や建物の壁に固定する際、金具やボルトの耐荷重を超えると事故につながります。
屋外で長期間使用するため、防錆加工や定期的な点検も欠かせません。
光回線とメッセンジャーワイヤーの関係
光ファイバーは非常に細く、外的な力には弱い素材です。
高速大容量の通信を可能にしているのは、メッセンジャーワイヤーによって物理的な負荷から守られているからといえます。
特にFTTHでは、細いドロップケーブルが家々に引き込まれますが、その背後には必ずワイヤーの存在があります。
もしワイヤーがなければ、わずかな風や積雪でも断線してしまうでしょう。
まとめ
メッセンジャーワイヤーは、普段あまり注目されることのない存在です。
しかし、私たちが日常的に利用するインターネットや電話の回線は、この小さなワイヤーに支えられています。
電柱の間に張られた一本の線。その緊張感のある姿は、都市の景観の一部であり、同時に社会を支える生命線でもあります。
現場でこのワイヤーを張る作業は、地味で手間のかかるものです。
張力の調整ひとつで通信の安定性が左右されるからこそ、技術者は細心の注意を払います。
そして工事が終わり、光が通り、誰かの暮らしが便利になる瞬間。
その背景にはメッセンジャーワイヤーを扱った無数の手仕事があり、その一つひとつが社会をつなげています。
小さなワイヤー一本に込められた意味を知ると、通信インフラを築く仕事の奥深さと誇りを感じることができるのではないでしょうか。



コメントを投稿する