基地局におけるセクターとは？3セクター方式が基本となっている理由も解説

2025年8月17日

携帯電話ネットワークにおいて、基地局は通信の心臓部です。

そのアンテナから放たれる電波が、人々の生活を結ぶ目に見えない糸となります。

そして、その基地局設計に欠かせない概念が「セクター」です。

本記事では、セクターとは何かを定義し、なぜ多くの基地局が3セクター方式を採用しているのかを解説します。

また都市型基地局を例に取り、セクター化がどのように通信を支えているのかを見ていきましょう。

目次（タップできます）

セクターとはそもそも何か？

基地局がカバーする通信エリアは「セル」と呼ばれます。そのセルを扇形に分割したものがセクターです。

オムニアンテナ（全方位型）では1つのアンテナで360度を丸ごとカバー、これが「1セクタ」

指向性アンテナを用い、360度を複数に切り分けて担当 → これが「セクタ方式」

典型例は3セクター方式で、120度ずつに分けて3本のアンテナが周囲を見張る形です。

都市のビル屋上で、円筒状のアンテナが三方向に取り付けられている光景は、まさに3セクタ基地局の象徴です。

それはまるで都市を見守る三つの灯台のように、ユーザーを包み込むのです。

全方位アンテナでは、すべての端末が同じ資源を共有するため混雑に弱いという欠点があります。

セクター方式ではエリアを分け、アンテナごとにリソースを割り当てることで、収容容量は理論上セクタ数に比例して増加します。

「1枚の大きな布で覆うより、3枚の布で編む方が、隙間なく、そして強く編み上げられる」それがセクター化のイメージです。

電波は広がれば広がるほど、他のエリアとぶつかり干渉を起こします。

セクター化は電波を扇のように絞ることで、余計な方向に漏らさず、狙った方向だけを照らします。

ただし、ビームを細くしすぎればエリアに穴が生じるため、エリア設計という職人技のような調整が必要です。

都市のビル街を編むように並ぶ3セクタアンテナ。360度を3分割して効率的にカバーし、ビルの谷間や繁華街の隅々まで電波を届けます。

混雑の激しいエリアではさらに6セクタ方式も採用され、細やかに区切られた電波の扇が都市の需要に応えます。

高層ビル屋上に立ち並ぶアンテナ群は、一見すると無機質ですが、その一本一本が「どの方向に、どの範囲を照らすか」を緻密に計算された結果です。

まるで都市を縫う光の扇が重なり合って、人々の通信を支えているのです。

セクターとは、単なる技術的な区分以上の存在です。

それは都市を縫う糸であり、人々を結ぶ扇であり、そして通信を安定させる心臓の鼓動のようなものです。

3セクター方式は長く標準として使われてきましたが、その裏には緻密なセルプランニングと電波工学の叡智が息づいています。

街を歩くとき、ふとビル屋上のアンテナ群を見上げてみてください。

「この基地局は何セクタで、どの方向に電波を発射しているのだろう？」

そう想像するだけで、通信エンジニアの視点から都市の風景が少し違って見えてくるはずです。