ネットワーク機器の中で、小さくても大きな存在感を放つ部品があります。
それがSFP(Small Form-factor Pluggable)モジュールです。
固定ポートでは叶えられない柔軟性をもたらすこの部品は、日々のネットワーク運用において頼れる相棒です。
この記事では、SFPの基本から種類、役割、選び方、運用の注意点まで、実務に即して整理します。
SFPとは何か、その登場の背景

画像出典:Cisco公式サイトより引用
SFPは「Small Form-factor Pluggable」の略で、着脱可能な小型トランシーバーモジュールを指します。
光ファイバーやUTPケーブルのインターフェースとして機器に組み込み、電気信号と光信号の変換を行います。
同じスイッチやルーターでも、SFPを差し替えるだけで異なる通信方式や距離要件に柔軟に対応できるのが大きな魅力です。
登場以前はGBICと呼ばれる大型のモジュールが使われていましたが、SFPはその半分ほどのサイズ。
小型化によってスイッチやルーターのポート密度が向上し、ネットワーク設計の自由度が一気に広がりました。
さらにホットスワップ対応で、稼働中でも安全に交換が可能。
障害時や構成変更時の心強い武器になりました。
SFPの基本構造と特徴
SFPは一方が機器側の接点、もう一方がケーブル接続口。
光ファイバー用ではLCコネクタが一般的で、シングルモード/マルチモードに対応した種類が存在します。
銅線用のRJ45型もあり、既存のLAN配線を活かすことも可能です。
主な特徴は以下の通りです。
- 小型・高密度:限られたスペースに多数のポートを実装可能
- モジュール式の柔軟性:必要な媒体・距離に応じて差し替え可能
- ホットスワップ対応:稼働中でも交換でき、ダウンタイムを最小化
- DDM機能:温度や光パワーなどをリアルタイムで監視
モジュールの種類と通信規格
SFPの形は同じでも、中身と性能はさまざまです。
- SFP:1Gbps対応。1000BASE-SX/LXなど、距離・波長で複数のバリエーション。
- SFP+:10Gbps対応。SR(短距離)、LR(長距離)、ER/ZR(超長距離)など。
- SFP28:25Gbps対応。データセンターや高速バックボーンに利用。
- SFP56/SFP-DD:さらに高速な50Gbps〜100Gbpsクラスまで対応可能。
- 特殊タイプ:BiDi(1芯双方向)、CWDM/DWDM(波長多重)、RJ45型(電気銅線用)など。
同じ形状で多彩な規格に対応できることこそ、SFPの真骨頂です。
ネットワーク機器での役割と活用例
SFPはスイッチやルーターの物理ポートを自在に変化させます。
たとえば、支社と本社を数キロ離れたシングルモード光で接続したり、ラック内の短距離接続にDACケーブルを使ったり。
状況や要件に合わせ、機器本体を変えずに構成を最適化できます。
障害時にも、予備のモジュールを挿すだけで復旧可能。機器交換に比べて圧倒的に短時間で対応できます。
モジュール選定のポイント
- 速度:ポートの対応速度(1G/10G/25Gなど)に合わせる
- 距離とファイバー種別:必要距離と既存配線(SM/MM)を確認
- 媒体:光か銅線か、あるいはDAC/AOCか
- 温度環境:屋外や高温環境では産業用グレードを選択
- 互換性:機器メーカーの互換性リストを事前に確認
運用上の注意点
- DDMでの監視:温度・光パワーを定期チェックし、劣化や異常を早期発見
- 障害切り分け:モジュール交換やケーブル変更で原因を特定
- 在庫管理:重要リンクの予備モジュールを適切に保管し、型番と設置先を記録
- コネクタの清掃:ホコリや汚れは光損失の原因。ダストキャップを活用
まとめ
SFPは、小さなパーツでありながらネットワークの柔軟性と信頼性を大きく左右します。
その存在を正しく理解し、状況に応じて最適な種類を選び、日常的な監視と適切な取り扱いを行うこと。
これが、現場で長く安定した通信を保つための秘訣です。
ネットワークの血管を繋ぐこの小さなモジュールが、今日も静かに大きな役割を果たしています。
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