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宇宙RAN戦国時代の到来!次世代宇宙通信の覇者になるのは誰?

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地上のインフラが届かない孤立地域や災害現場において、宇宙通信は新たな希望の光となりつつあります。

例えば2024年元日に発生した能登半島地震では、通信網が寸断された被災地でKDDIが提供するStarlinkルーターが救援活動を支え、避難所や消防署で避難者との連絡や緊急情報の共有を可能にしました。

このように、衛星通信やHAPS(高高度擬似衛星)の技術革新は、遠隔地や緊急時にも安定した通信をもたらし、人々に安心と可能性を届けています。

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次世代宇宙通信と宇宙RANの必要性を考える

通信インフラの未整備地域や災害時のバックアップ手段として、宇宙(非地上)ネットワークへの期待が高まっています。

特に低軌道衛星(LEO)技術の進展により、従来の衛星通信に比べ遅延が大幅に低減され、リアルタイム性を要するサービスが可能になりました。

SpaceXのStarlink衛星群は2025年半ばまでに累計9,003機が打ち上げられ、そのうち約7,800機が稼働中です。

さらにStarlinkは2024年9月時点で400万人以上の加入者を抱え、広大なサービスエリアを実現しています。

このような世界規模のネットワークにより、山間部や離島、船舶やドローンなど従来通信が難しかった領域でも高速インターネットが届くようになっています。

国内でも大手キャリアが宇宙通信に注力しており、NTTドコモやKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなどは5G/4G網と衛星・HAPSを統合したシステム開発を進めています。

たとえば、NTTドコモはNTTグループや衛星事業者JSATと共同で設立したスペースコンパス社を通じ、HAPSを活用した直接端末通信(D2D)の実験・開発を行っています。

同プロジェクトは2025年度中の商用化を目指し、地上基地局やHAPS搭載機器の開発・実証を推進しており、災害時や離島・山間部での通信品質向上を期待しています。

宇宙通信をめぐるグローバル競争

宇宙通信・NTN(非地上網)市場は、国際的に非常に活発な競争環境となっています。

国内ではNTTグループ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルなどが衛星通信技術への投資を加速しており、世界的にもSpaceX(Starlink)やAmazon(Project Kuiper)、OneWeb(Eutelsat)、AST SpaceMobile、Telesatなど多くの企業が参入しています。

また、AT&T、Vodafone、Google(Alphabet)といったグローバルキャリアもAST SpaceMobileに出資するなど、宇宙ベースの携帯通信網への期待を示しています。

特にAST SpaceMobileは、40以上の携帯キャリアと提携し、世界で約20億人をカバーする衛星直結ブロードバンド網の構築を進めており、国際競争の激化を象徴しています。

政府も宇宙通信の市場創出に力を入れており、日本では経済産業省が2020年時点約4兆円規模だった宇宙産業市場を2030年代前半に約2倍の8兆円に拡大する目標を掲げています。

世界全体でも、モルガン・スタンレーは宇宙経済が2035年に約180兆円規模になると予測するなど、成長余地は巨大です。

さらにNTTグループは2023年11月、AmazonのProject Kuiperと提携して山間部・離島の5Gコア網接続に衛星技術を活用する計画を発表しました。

Project Kuiper側でも2025年4月に最初の27基の衛星を打ち上げ、総計3,236機の衛星によるネットワーク構築を開始しています。

このように、官民連携や国際協業も加速しており、国内外で宇宙通信の市場創造と技術革新が同時並行で進んでいます。

日本主要キャリアの宇宙通信戦略は?

NTTドコモ・NTTグループ

NTTドコモはNTTおよびJSATとともにSpace Compassを推進し、NICTの助成を受けてHAPSを使ったD2D通信サービスの実現を目指しています。

2025年度中のHAPSサービス開始を見据え、地上側基地局やHAPS機器の開発・実証を進めており、災害時や離島・山間部でのモバイルカバレッジ拡大に挑戦しています。

KDDI(au)

KDDIは2025年4月10日、SpaceXのStarlink衛星を利用した「au Starlink Direct」サービスを開始しました。

このサービスにより、空が見渡せる場所では全国どこでもauスマホがStarlinkに直接接続でき、緊急時のメッセージ送受信や位置共有が可能になりました。

さらに同年5月からはUQ mobileやpovoなど他社利用者にも「au Starlink Direct」の提供を拡大し、日本全国に未接続地域ゼロのインフラを構築しています。

ソフトバンク

ソフトバンクは2024年12月にEutelsatグループのOneWeb衛星通信サービスを企業・自治体向けに導入しました。

高速・低遅延の通信プランを複数展開し、海上や山間部での通信基盤を強化しています。

また2024年9月には米Intelsatと提携し、衛星通信と5Gのシームレス接続を目指す研究開発を開始しました。

これにより既存の5G端末で衛星ネットワークに自動で切り替わる技術の実用化が期待されています。

楽天モバイル

楽天モバイルは米AST SpaceMobileと連携し、LEO衛星によるスマホ直通通信の実現に挑んでいます。

2025年4月には標準スマホで双方向のブロードバンド映像通話を衛星経由で行う実証実験に成功し、2026年下期の商用サービス開始を計画しています。

これにより、日本の山間地や離島でもスマートフォンだけで広帯域通信が可能になる道が開かれます。

楽天は加えて、クラウドネイティブ技術を応用した低コストHAPS/宇宙RANの研究開発も進めています。

海外主要勢力の展開はどうなる?

Starlink(SpaceX)

SpaceXのStarlinkは世界最多規模のLEO衛星コンステレーションで、2025年半ば時点で約7,800機の衛星を軌道上に展開しています。

サービスは北米・欧州・アジア・南米の多数の国で利用可能となっており、高速固定通信のみならず、携帯端末向けの「ダイレクト・トゥ・セル」サービスでも先行しています。

また2024年には2G/4G/5G通話の衛星経由実証に成功しており、柔軟なハイブリッド運用モデルを追求しています。

Project Kuiper(Amazon)

AmazonのProject Kuiperも2025年4月に最初の27機を打ち上げ、総計3,236機の衛星ネットワーク構築に本格的に着手しました。

NTTグループとの提携により日本市場へのサービス投入を目指しており、AWSのクラウド基盤と連携した企業向けサービスも注目されています。

Amazonは遅れを取ったものの、6G時代を見据えたグローバル通信網でStarlinkに挑戦しています。

その他のプレーヤー

Eutelsat傘下のOneWebやカナダのTelesat、中国国営企業などもそれぞれ衛星網の拡充を進めています。

特に中国は自国主導で衛星通信技術を急速に拡大しており、世界の衛星通信市場で競争は熾烈さを増しています。

国内外プレーヤーの技術アプローチ比較

国内キャリアは従来の5G/4Gインフラとの統合を重視し、HAPSや衛星を既存ネットワークの延長として活用するアプローチを取っています。

一方で海外の大手テック企業は全世界を視野に入れた大規模ネットワーク構築を優先し、開発スピードや巨額投資でリードしています。

これらのネットワーク間の相互運用性を実現するため、ソフトバンクとIntelsatのような業界横断的提携も進みつつあります。

さらに、宇宙RANの実現には通信キャリアだけでなく、衛星事業者、通信機器メーカー、クラウド事業者、政府機関などが手を組んだエコシステム構築が不可欠です。

例えばNTTやスペースコンパスといった企業連合は、災害対応や海洋・航空通信など従来型基地局ではカバーしづらい領域でシームレスに通信を提供することを目指しています。

まとめ:次世代宇宙通信で未来をつなぐ挑戦

宇宙RAN/NTNによる通信サービス実現には、通信遅延の軽減や耐環境性・省電力設計、広域ハンドオーバー制御、セキュリティ強化など多くの技術課題が伴います。

例えば衛星間や衛星-地上間の大きな伝播遅延に対処するために、通信プロトコルの最適化(UDPの活用やTCP高速化など)が検討されています。

また、衛星と地上網間の自動ローミングやハンドオーバー機能を高度化する必要があります。

ハード面では、長寿命衛星の耐放射線設計や低軌道での省電力無線機器の開発などが求められています。

こうした中で、キャリア各社の生き残り戦略のカギとなるのは、スマホ直結型通信の商用化、海外衛星事業者とのアライアンス、5G/6G地上網とのシームレスな連携、そして低コスト衛星運用技術の確立です。

加えて、AIやクラウドRAN技術を活用したネットワーク運用最適化、規制・標準化への先行対応など、多角的な取り組みが求められます。

技術面・政策面の両輪で挑戦を続ける企業が、未来の宇宙通信網でリードし、新たな時代における「つながる希望」を切り拓いていくことでしょう。

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